
毎日通る花屋、自宅の庭、そして仕事の疲れをいやしてくれる公園で
咲き誇る草花には、秘められた思いや、物語があります。
世界中、それぞれの土地にまつわる歴史や言い伝えのなかからほんの一幕をご紹介。
春になると花屋にあふれる色とりどりの花たち。
なじみ深い花たちが新鮮に思える、そしてもっと身近に感じるストーリーの数々です。
■欧州が熱狂した恋の花 チューリップ

16世紀にトルコからヨーロッパに渡ったチューリップは、とくにオランダで人気が沸騰しました。
時には球根と銀を交換したり、チューリップのために破産する人すらあったとか。
そんなオランダにはチューリップにまつわる伝説があります。
3人の青年に求婚された美しい娘。
青年たちは、それぞれ家宝を娘に捧げます。
困り果てた娘は花の神フローラに頼んで自分の姿をチューリップに変えてもらったのでした。
伝説にもなるチューリップには愛に関わる花言葉が多くあり、それは色によって違います。
今では数千もの品種があるとされるチューリップの花言葉はこれからも増えるかもしれません。
[花言葉] 赤: 愛の告白 白: 失恋・新しい恋 紫: 永遠の愛
■愛の強さから生まれた花 アネモネ

愛と美の女神アフロディーテに愛された美青年アドニスが流した血から咲いた花
それがアネモネです。
実は、ギリシャ神話に描かれたアネモネはこれだけではありません。
それはアネモネの語源である「風(アネモス)」にも通じるお話。
西風の神ゼピュロスは、花の神フローラにつかえる妖精アネモネに恋をします。
ところがフローラは恋の相手が自分でないことに腹を立て
アネモネを追い出してしまいます。
ゼピュロスはそのことに心を痛めてアネモネを花の姿に変えたのでした。
バラの花に似た姿から、ドイツでは「小さな風のバラ」と呼ばれ
イギリスでは葉がパセリに似ているので「バラ・パセリ」とも。
日本では「はないちげ」という別名があります。
[花言葉] 恋の苦しみ はかない恋 期待
■イタリア生まれの情熱的な香り スイトピー

イタリアからヨーロッパに伝えられた頃
スイートピーは豊かな香りが情熱を呼び起こすといわれ
寝室に飾ることも多かったといいます。
日本での別名は「麝香連理草(じゃこうれんりそう)」
麝香は高級香料のことで、連理は仲むつまじい男女のことを表します。
香りのイメージとはちょっと違って
花言葉は蝶が飛び立つような花の姿から。
卒業の春にふさわしいさわやかな旅立ちの意味がめられています。
[花言葉] 門出 別離
■独立を助けた勲章花 アザミ

鋭い針を連想させる花、トゲを持つ茎。
アザミは北欧では魔よけや雷除けの意味をもち、キリストの十字架から抜いた
クギを埋めた地面から、咲き出したと伝えられています。
13世紀のスコットランドは、攻め入ってこようとする他国の兵士を
アザミのトゲが追い払ったとして、王家の紋章(国花)にもなりました。
花言葉は、そんな歴史からつけられたのです。
[花言葉] 独立 権威
◆香りに秘められたハーブ物語◆
春に多くの苗が出回るハーブには、古くから伝わる伝説や
そこから生まれた花言葉があります。
親しまれ、ときに神話の主役となったハーブたちを紐解きましょう。
■長寿の名を持つハーブ セージ

「薬用サルビア」の日本名を持つのがセージです。
夏の花でおなじみのサルビアはセージの仲間で
ラテン語の「Salvara(死から救う)」が語源。
「長寿を願うものは5月にセージを食べよ」という古いことわざがイギリスに伝わっています。
しかし、北欧に伝わるのは悲しい恋物語です。
妖精のセージが恋したのは人間の王。
密かな恋心を胸に、遠くから見つめる日々を過ごしていました。
王はいつしかその視線に気づき、恋は叶います。
しかし人間とは結ばれない運命の妖精セージは
愛と引き替えに命を落としてしまうのでした。
古代から長寿を叶える万能薬として珍重され、中国では高値で取引されたといいます。
歯磨き粉が生まれる前は、歯を清める薬として使われていたセージも
現代では料理に欠かせないハーブとして人気です。
[花言葉] 赤 燃える思い 紫 尊敬
■深い紫は愛の証 スイートバイオレット

花を砂糖漬けにしてケーキに飾るなど美しい紫色と可憐さが人気のハーブ。
バイオレットは紫色とスミレの両方を表します。
その鮮やかな紫には、ヴィーナスが白いスミレを自分より美しいと嫉妬して叩いたところ
紫になったというギリシャ神話があります。
野の花としても親しまれるこの花にはもう一つの神話も。
ゼウスは清い乙女に本気で恋をします。
しかしすでに妻があったゼウスはその嫉妬を恐れて乙女を牛に変身させます。
そして、野草ばかり食べさせるのはかわいそうだと
スイートバイオレットを草原にたくさん咲かせました。
愛の証を示すような神話から花言葉は生まれました。
そして、かのナポレオンが毎年の結婚記念日に愛妻に贈った花としても有名です。
[花言葉] 愛 誠実
■リンゴの香り漂うガーデンハーブ カモミール

心地よい眠りを誘うとしてクレオパトラも飲んだというカモミールティー。
古代ギリシャではリンゴのような香りから「大地のリンゴ」と呼ばれていました。
イギリスでは宮殿のガーデンにもたくさんのカモミールが植えられており
かつては虫除け剤として使われたとか。
芝生の代わりに植えられ
花言葉は「踏めば踏むほど元気に育つ」という言い伝えを表しています。
[花言葉] 逆境に立ち向かうエネルギー 忍耐
■ 愛と勇気の伝説に彩られて タイム

すがすがしい香りからリフレッシュしたい時のアロマとしても使われるタイム。
ギリシャ語の「勇気」を意味するこのハーブは
騎士たちが戦場へ赴く前入浴剤として用いられ勇気をもたらしたと言われます。
また騎士の妻や恋人たちは戦場での活躍を願い
タイムを縫いつけたスカーフを愛のお守りとして贈りました。
タイムとローズマリーを入れた靴を両脇に置いて眠ると
結婚相手が夢に現れるという伝説もあります。
[花言葉] 勇気
神話や花言葉を抱いた草花はきっといつもとは違う表情に見えるはず。
部屋に飾るとき、誰かに贈るとき
その秘められたSTORYをそっと思い出してみてください。
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