
かぐわしい香りや優美な姿。
バラはいつの時代も見るものを魅了します。
観賞用に品種改良されたものを含めて二万ほどの種類があり
四季を通して楽しめるバラがたくさんありますが
ダマスクローズなどの古代薔薇は5月から6月にかけて花を咲かせます。
優雅で甘い香りのバラは女性の大好きな香り。
数あるバラの中でもブルガリア産のダマスクローズは非常に香りが高く
「ダマスローズなくして香水の名品は生まれない」といわれるほど。
その香りは専門家によると「透き通るような華やかで強い甘さの中に
ラズベリーやピーチの様なフルーティーな香り。
そして若干のスパイシーな香りを含む」と表されます。
世界3大美女に数えられるクレオパトラもバラを愛したひとり。
恋人を宮殿に迎える際、床一面に花びらを敷き詰めてもてなしました。
ボッティチェリの名画『ヴィーナスの誕生』
シェイクスピアの詩や劇をはじめ、多くの芸術作品にもバラが登場します。
それほどこよなく愛されている花なのです。
古くはバビロン王朝宮廷にも薔薇は咲きほこっていたといわれています。
ギリシャ時代の神話にも薔薇の花が出てきます。
ギリシャ神話の美と愛の女神アフロディテが、泡の中から誕生した時に
アフロディテと一緒に生み出した花とされます。
花の女王の座に君臨し、さまざまな表情を持っていることもあり
世界中でもっとも多くプレゼントに贈られる花です。
しかし19世紀頃までの薔薇は花も小さく四季咲き性もありませんでした。
近代薔薇の誕生を促す役目を担ったのは、ナポレオンの皇后ジョセフィン。
彼女はナポレオンの威光のもと、パリ郊外のマルメゾン宮殿の庭に
多くの品種を集めましたが、その中にあった中国産の「庚申薔薇」が
それまでの薔薇に四季咲き性を導入させることになります。
彼女は、園芸家たちに薔薇の品種改良を進めさせ
四季咲き中輪の薔薇「ティ・ローズ」と、四季咲き性は少ないが
大輪咲きの薔薇「ハイブリッド・パーペチュアル」を作り出させました。
やがてこの二つの系統の薔薇の特徴を生かした四季咲き性大輪の薔薇
「ラ・フランス」がフランスの育種家ギョウによって世に送り出されました。

バラの花びらは香料や薬にも使われてきました。
大変貴重なローズオイルは王侯貴族が香水として使ったり
肌の手入れのために愛用したとか。
花びらのエキスは消化を促したりのどの痛みを和らげるとして飲まれてきました。
バラの花びらにはポリフェノールが豊富に含まれます。
中でも話題の成分がオイゲニインでアレルギー症状を和らげてくれます。
一口にバラのエッセンシャルオイルといってもランクはさまざまです。
もっとも品格が高いと格付けされている「ローズオットー」は
バラの品種、原産地、抽出方法がすべて限定されており
<ブルガリア産のダマスクローズから蒸留抽出されたもの>と決められています。
季語は夏(「冬薔薇」「ふゆそうび」となると冬の季語になる)
花言葉 『愛情』『嫉妬』 あなたを尊敬します・美・温かい心・恋
薔薇にはたくさんの種類があります。
全ての花に共通の花言葉として『愛情』が有名ですが
その他、色や形、用途などによって様々な花言葉があります。
・ 赤色:『真実の愛』『熱烈な愛』『情熱』
・ 赤(つぼみ):『純粋』 『愛らしさ』
・ 白色:『あなたを尊敬します』
・ 桃色:『時の感銘』
・ 黄色:『愛の減退』 『嫉妬』
・ 花束(赤と白):『調和』
・ 一重咲きの薔薇:『淡白』
・ 結婚式の薔薇:『幸福な愛』
・ 花束(花とつぼみ):『秘密』
・ 薔薇のつぼみ:『恋の告白』
と言うように色、形によって花言葉も変わってきます。

薔薇・・・私も大好きな花のひとつですが
「完成された美」と言った感じです。
多くの貴族達が気の遠くなる程のお金と時間をかけて交配を繰り返し
現在の完璧な薔薇の花を造りあげました。
長い栽培の歴史を物語るこの花は、愛と美のシンボルとして
女性だけではなく男性の心にも強く印象づけられるのもです。
クレオパトラが、恋人アントニウスのために床に敷き詰められた花も
ナポレオンがジョセフィーヌのために床に振りまいた花びらもこの高貴な薔薇。
「八月の鯨」と言う名作の映画の中では
老女が亡き夫との結婚記念日を祝う場合の中で使われていました。
コーヒー・テーブルの上に1本の薔薇を飾り
老女はゆっくりワインを飲んでは、過ぎし日を想い出すのです。
このシーンの1本の薔薇の優しさと寂しさ.....複雑な花です。
『愛情』と『嫉妬』…永遠のテーマを内包して君臨する花なのです。
・・・様々な薔薇たちが私たちの風景を飾り立て
その中からすてきな出逢いが生まれ続けています。

日本はバラの自生地として世界的に知られており
品種改良に使用された原種のうち3種類は日本原産です。
古くはバラは「うまら」「うばら」と呼ばれ『万葉集』にも
「みちのへの茨(うまら)の末(うれ)に延(ほ)ほ豆のからまる君をはかれか行かむ」
という歌があります。
『常陸国風土記』の茨城郡条には
「穴に住み人をおびやかす土賊の佐伯を滅ぼすために
イバラを穴に仕掛け追い込んでイバラに身をかけさせた」とあります。
常陸国にはこの故事にちなむ茨城(うばらき)という地名があり
茨城県の県名の由来ともなっています。
このように日本人にはゆかりのある植物といえます。
江戸時代には身分を問わず園芸がはやりましたが
バラも「コウシンバラ」「モッコウバラ」などが栽培されおり
江戸時代日本の訪れたドイツ人ケンペルも
「日本でバラが栽培されている」ことを記録しています。
また与謝蕪村が「愁いつつ岡にのぼれば花いばら」の句を残しています。
バラがいまのように「花の女王」として愛好されるようになるのは明治以降で
明治維新を迎えると明治政府は「ラ・フランス」を農業試験用の植物として取り寄せ
青山官制農園(いまの東京大学農学部)で栽培させました。
馥郁とした香りを嗅ごうと見物客がしばしば訪れたので
株には金網の柵がかけられたといいます。
まだ、バラは西洋の「高嶺の花」だったのです。
その後、バラが接ぎ木で増やせることから、優秀な接ぎ木職人のいる
東京郊外や京阪神地域の郊外で栽培が行われるようになりました。
バラは華族や高級官僚といったパトロンを得て
日本でも徐々に愛好され始め生産量も増え始めました。
大正から昭和のころには一般家庭にも普及し
宮沢賢治が「グリュース・アン・テプリッツ(日本名:日光)」を愛し
北原白秋の詩にもバラが登場しています。

第二次世界大戦で日本でもバラの栽培より野菜の栽培が優先され生産が停滞。
しかし、戦後すぐの1948年には銀座でバラの展示会が開かれ
さらに1949年には横浜でバラの展示会が開かれ
そのときにはアメリカから花を空輸して展示用の花がそろえられました。
このように戦後の高度成長の波に乗り、バラは嗜好品として庶民にも普及していき
日本でも品種改良が行われるようになったのです。
また鉄道会社が沿線開発の一環としてバラ園の造営を行うようになり
各地にバラ園が開園されました。
日本ではバラは花卉としてはキク、カーネーションとならぶ生産高があり
ハウス栽培で年中市場に供給されるようになりました。
また園芸植物としてのバラは、ハイブリット・ティの花のできばえを競う
「コンテスト」などが行われています。
その一方で最近ではガーデニングの流行などでオールドローズなどが
植栽素材に再び注目を集め、多くの人に愛好されるようになりました。

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